*一部、敬称は省略させていただきました。33 1/3回転は33回転と略します。
1.「 DAM」と「DAMPC」の説明 (1) DAMとは ● 第一家庭電器・オーディオ・メンバーズ(クラブ)の頭文字。(会費無料)
● 1973年12月発足 *1974年2月 FMファン等、主要オーディオ誌で宣伝開始。
DAMとDACは、第一家電オーディオ&ビジュアル販売の車の両輪として発展していきます。
● 1974年4月 DAC渋谷 開店 (DAC一号店・東急文化会館6F --- 現在は渋谷ヒカリエとなっています。)*DACとは 第一家庭電器・オーディオ・センターの頭文字。
(オーディオとビジュアル機器の専門店。白物家電の展示はない)
その後、DAC千葉、DAC秋葉原F1、F2、F3 DAC吉祥寺、DAC柏、DAC新宿、DACサンシャイン、
DAC学園都市、DAC伊勢崎と出店。
ソフトも販売する、able秋葉原、able川越もにつながりました。
他にAV+パソコンの、マルチメディア・パーク 小山 、北越谷がありました。
● 会員特典
・生録音会無料招待
I. 藤家虹ニクインテット、II&V. 渡辺貞夫カルテット(2回)、III. ジョージ大塚クインテット 、
IV. 宮間利之とニューハード(DOR0030)
・年2回のアクセサリー頒布会において、会員頒布価格(DAMオーディオ・チェックレコード特典付き)で購入できる。
*4回以降は、「マニアを追い越せ!大作戦」とサブタイトル併記。
・生テープの割引、コンサートなどイベント無料招待、会報など。
* その後、Tapeメイト会員(会費無料)、VIP(会費有料)などがスタート
(2) DAMPCとは----- DAM推進委員会(DAM Promotion Committee) ● DAMの運営メンバーの総称 ----- 第一家電のオーディオ・グループのメンバーから 3名 + 社外から1名参加
● DAMレコードに関する「DAMPC」のメンバー構成
当時のメンバーは、古川義男(第一家電 故人)、尾頭重徳(第一家電)、岩瀬勝一(第一家電)、渡邉昌彦(社外)
DAMレコード解説書の「制作にあたって」の原稿担当
イベント・記念レコードなど会社を代表する場合 ----- 古川 イベント・カラオケ ----- 尾頭 主として、ジャズ・ポップス ----- 岩瀬 主としてクラシック。
*初期のカラオケや、クラシック以外のキング原盤も含む----- 渡邉 (3) DAMレコード (1975年11月〜1990年11月) DOR0001〜DOR0174 *欠番3枚 ● DAMが企画し、レコード・メーカーに発注して全量を引き取った、いわゆる自主制作レコード (非売品の完全限定盤)です。
● 収録内容、ジャケット&解説書、レコード盤の仕様などを総合して同じ内容のものは、DAM以外で発表・発売されていません。
*DOR ---- DAMオリジナル・レコードの略(この後に数字4桁が続きます)。下記の様に6種類あります。
他にDOCD(DAMオリジナルCD)、DOT(DAMオリジナル・テープ)があります。
・DAM45 (一部33回転)--------- DAM頒布会用オーディオ・チェックレコード 年2回 合計4種類発表
*「マニアを追い越せ!大作戦」のサブタイトルで、FM誌、などで宣伝展開しました。
*レコード会社の原盤を使用したものと、DAMが企画・制作した、DAMオリジナル録音 (一部共同録音)した2種類があります。
*DAMオリジナル録音の中からまず6タイトルが、ユニバーサル・ミュージックから2018年1月24日、DSD11.2で配信開始となりました。
・VIPレコード (45・33回転)
VIP会員向け(年会費あり)、年1回の特典レコード。
愛蔵家No付き、少量限定発行(1,000〜4,000枚前後)。(DAMオリジナル録音も8タイトル有り)
・バイノーラル・レコード(33回転)
バイノール録音のみ。初期に2タイトル発表。(DAMオリジナル録音-東芝と共同制作)
・カラオケレコード(33回転)
ファミリー向けに東芝EMIとDAMの共同企画によるレコード。
(カラオケコンテストも7タイトルあります。)
・20周年記念レコード(33回転)
第一家電20周年記念「ディーク・エイセス 心のうたリサイタル (2枚組)」のみです。(DAMオリジナル録音)
*この記念アルバムは、ユニバーサル・ミュージックから2018年1月24日、DSD11.2で配信開始となりました
・音楽セットレコード(33回転)
初期に「HOME MUSIC LIBRARY(10枚組)」、「YOUNG MUSIC LIBRARY(10枚組)」
「Best Request Music Joy (4枚組)」の3タイトルがあります。
(4)DAMレコード総タイトル数 100タイトル --- DAM45を含む、DORナンバーのレコード(DOR0001~174)*欠番が3枚あります
分類 タイトル数 枚数 配布方法 製造メーカー(タイトル数)DAMレコード全体(DOR0001~174) 100 171枚 非売品 東芝EMI (93)、キングレコード (6)
ファンハウス(1)● DAMオーディオチェック 60 73 会員専用
非売品 東芝EMI (54)、キングレコード (5)、
ファンハウス(1) ・DAMオリジナル録音
(共同録音も含む)
27 33 東芝EMI (26)、 ファンハウス(1) ・レコード会社 原盤使用 33 40 東芝EMI (28)、 キングレコード(5)● VIPレコード 12 17 東芝EMI (11)、 キングレコード(1) ・DAMオリジナル録音
(共同録音も含む) 8 9 東芝EMI (8) ・レコード会社 原盤使用 4 8 東芝EMI (3)、 キングレコード(1) ● バイノーラル録音
*DAMオリジナル録音(共同録音も含む) 2 2 東芝EMI (2)● 創立20周年記念レコード
*DAMオリジナル録音 1 2 非売品 東芝EMI (2)● システムコンポ等セット 3 24 東芝EMI (25) ● ファミリィ・カラオケ・レコード 15 46● カラオケ・コンテスト・レコード 7 7なお、DAMオーディオチェック・レコードとVIPレコードは、45回転 (一部33回転)です。その他は全て33回転です。
*● 黒丸付きのベージュ色のベルトは、オーディオ・チェックあるいはそれに準じた仕様です。 白色は通常市販仕様レコードです。
2. DAM45と、その誕生の経緯 (1)DAM45とは ● DAM会員向け特典の「カートリッジ頒布会」(後の「マニアを追い越せ!大作戦」に発展。第33回まで続く)で
対象カートリッジ購入すると、1〜2種類の45回転オーディオ・チェックレコードが添付されました。(第31回は、DAM33とDAMCDの組み合わせ)
● 全てのカートリッジに添付されたのが、ジャズ、ポップス系。
15,000円位からは更にクラシック系が追加添付されました。(2枚組の場合は、19,800円 前後から)*例外もありました
● なお、頒布会 =「マニアを追い越せ!大作戦」(年2回)ごとに、新しい2種類のDAM45がリリースされました。
結局、年間 4タイトル + VIP 1 タイトルというペースで発表。15年間で 72タイトル(60+12)発表されました。
(上記、表参照)
*初期と、東芝EMIのレコード製造が終了した後の、キング盤とファンハウス盤は33回転でした。
*DAM-VIP会員向けの年1回配布のものは、「DAM45 for VIP」としています。(一部33回転もあります)
詳しくは、「DAM45/33全一覧」または「カラオケを除いたDAM45/33一覧」をご覧ください。
(2)DAMオリジナル録音とは ● DAM45(33)の約半数は、東芝EMI、各国EMI、キングレコード、LONDONの原盤を、
DAM独自企画として、日本国内で新たにカッティングしたもので、37タイトルあります。
● DAMのオリジナリティをさらに出すため、DAM自身が新たに企画・録音したものを、
DAMオリジナル (録音)シリーズとしています。全部で36タイトルあります。
*東芝、東芝EMIやファンハウスと共同制作のものも含みます。
● 全36タイトルのうち28タイトルについては「TOP頁」にジャケット写真表示しています。
*クリックしていただければ、ダイレクトに該当タイトル詳細ページにジャンプします。
詳しくは、「DAM45/33全一覧」または「カラオケを除いたDAM45/33一覧」をご覧ください。(3)DAM45誕生までのいきさつ ■ 音質評価への疑問
クラシック音楽&オーディオ・ファンでもあった筆者は、オーディオ誌での機器の断定的な音質評価に、疑問を持っていました。
確かに、カートリッジやスピーカーを換えれば、大幅に音が変わります。
でもレコードに刻まれた音が本来どのようなものなのかわからなければ、その機器の再生が「原音に忠実」などとは言い切れないのでは?と思っていました。
■ 同じマスタ・テープのはずなのに、レコードの音が違う!
高校の放送部で合唱祭の録音に携わっていたとき、先輩の録音したフルトラックのモノーラル録音機の録再音は、臨場感あふれる生々しいものでした。
それを部室内で記念用にアセテート盤にカッティングして比べてみましたが、当然テープとは音質的に比較になりませんでした---。
商業レコードでも、再発売された同じ演奏が、以前のものと結構違って聞こえることが、少なからずありました。
同じマスターを使ったはずの、東芝EMI国内盤と、英国盤、ドイツ盤、フランス盤、アメリカ盤でもかなり違います。
■ カートリッジの音質評価の基準
当時、特定の輸入カートリジや国内の特定機種のみ、オーディオ誌の評価がひときわ高いので、購入してみたのですが、その評価に納得がいきませんでした。
そこで、カートリッジ頒布会でカートリッジの音質評価する場合、その試聴用レコードが本来どのように再生されるのが正しいかの判断基準が必要だと感じたことが、DAM45誕生へのそもそもの始まりなのです。
■ DAM45誕生までとそのの黎明期
頒布会レコードでDAMのオリジナリティを発揮するためには、全量買い取りで自主出版するのが、コンセプトを貫く上でも、コスト的にも良いのではないかと考え、かねてから知り合いの東芝EMIの澤田敞さんから、特販部の斉藤課長をご紹介いただいたところからスタートします。
特販部営業の小山正敏さんがDAMの担当者となり、その後14年間、最後までDAMレコードの担当責任者であり、良き理解者でもありました。
■ マスター・テープの情報量の凄さに唖然!
永年の疑問を解くためと、DAM会員に対する責任上、商業レコードとそのマスターテープを比較試聴しようと考えました。
そこで放送部の大先輩・鈴木重行さんに相談して、鈴木さんが録音した日本フィルハーモニー交響楽団のマスターテープと、東芝EMIに委託製造した完成レコードを聴かせていただくことになり、伺った先が、東芝EMIの渡部ミキサーでした。
(その後、渡部さんにはDAMオリジナル録音で度々お世話になることになります。)
他に、筆者の放送部の後輩 F君が、最新のプロスタジオに出向していましたので、そこで生音と調整卓からのモニター音、テープに録音・再生された音の差異などを聴かせて貰い、更に確信を得ました。
■ DAM45の目指す方向が見えてきた!
結果、マスターテープの音は、とても自然で臨場感に富み、情報量が圧倒的に多いことに気づかされました。
それを収録したレコードは、さすがにかなりの差がありましたが、マスターと相似形であれば、それなりに良いのではと思えたのです。
あとはどのような方法で、マスターテープに近づけるかの技術については、東芝EMI技術陣とのお話し合いとなりました
(4)DAM45誕生につながる筆者の個人的エピソード DAMPC 渡邉昌彦 1960年3月、高校入学前に、ステレオシステムを購入するため秋葉原へ。当時の秋葉原は「素人お断り」の札が下がっている店が多く、その中で、キチンとした対応をしてくれたのが唯一、第一家庭電器の万世橋店で、パイオニア(福音電気)とニートの組み合わせのコンポを購入。 店長が星野さん(後の社長)でした。
一週間ほどでVRカートリッジの音に不満を感じ、オーディオとクラシック音楽再生の難しさと魅力にのめり込んでいくきっかけとなりました---。
その後も度々出入りしているうちに、アルバイトを頼まれ、高校〜大学まで、繁忙期にはオーディオ販売のお手伝いをすることに---。
無論アルバイト料は、レコードや機器代、コンサート代(20代前半まで、国内主要オーケストラの定期演奏会と外来オーケストラに足繁く通っていました。)に消えました。
その後、東芝系の販社や、輸入オーディオ機器の代理店を経て、独立。その間も継続的に第一家電さんとの縁が続き、オーディオを中心として、社外から、企画・運営・宣伝・研修などのお手伝いをしてきました。
DAMスーパー・アナログ・ディスクに携わった16年間は、第一家庭電器さんのオーディオ販売の専門店スタートから隆盛の時期を含んでいます。
筆者は、カラオケを含むDAMレコードのすべてに関わり、他社情報の収集・試聴・交渉・企画提案・制作・製造、その後の宣伝・販売する社員様の研修・DAC店頭での状況把握等、一貫して携わることができました。
DAM45の最終発表から25年以上経た今でも、DAM45が毎日のようにWEB上で、話題になっているのを見るにつけ、今はなき、小山正敏氏や、関係者の皆様、発行者の第一家庭電器様への感謝の気持ちと、DAM45の正確な情報と世界に冠たる日本のアナログ・レコード製造技術向上の歩みを記録しておきたいという気持ちから、尾頭さん、岩瀬さんと相談してWEB公開することになりました。
公開にあたり、関係者90人を超えるかた全員のご賛同をえられたこと、心よりお礼申し上げます。
筆者は、高校時代から、レコードの録音上のトラブルや、製盤上の問題で、レコード・メーカーを度々訪ねていました。
当時のレコードは高いもので1枚3,000円〜4,000円前後していましたので、私としてはテープ編集ミスや製盤ミスは諦めきれなかったのです。
そんな中、エンジェルの赤盤---これは帯電防止剤の影響で、内周でノイズが出やすいものがありました。そんなクリュイタンスのベートーヴェン全集を、新橋の東芝音楽工業に持ち込みました。
そこで親切に対応してくれたのが、澤田 敞さんでした。
最初から高校生の私のクレームを真摯に受け止めてくれたのです。
そんなわけで、その後、DAM45スタート時や折りに触れて大変お世話になりました。
高校生の時、キング・レコードの高和元彦プロデューサーが、FM東海(FM東京の前身)で司会された番組「HiFiクラブ」、「名曲パズル」を欠かさず聴いていました。その頃はステレオ黎明期でもあり、ミュンヒンガーの四季(キング国内初ステレオ SLB1)、バックハウスの「皇帝」、ブリテンの「戦争レクイエム」、マルティノンの「悲愴」、クリップスの「チャイコフスキーSym.5」、アンセルメのバレエ音楽など多数のロンドン盤をすり切れるまで愛聴していました。
アナログ・レコードの最後の時期に「アナログの鬼」といわれている高和さんからその英デッカやキングの名盤をDAMにご提供いただいた、不思議なご縁をとても光栄に思うとともに、日本を代表する名プロデューサーと仕事をさせていただけたことを、心より感謝しております。
高品質のアナログ・レコードの製造がもう少しだけ続いていれば、更に名盤をスーパー・アナログ・ディスクとして残せたのにと、それが少し心残りではあります。
今回、高和さんに連絡をとらせていただいたところ「ハイレゾはようやくアナログに近づいたよ!今、鈴木勲をハイレゾで録っているのだ。」という「アナログの鬼」の元気なお声を聞くことができました。
*DAMの「四季」、「皇帝」のジャケット裏写真、「戦争レクイエム」の解説書は、筆者の愛聴盤(日本初発売時のもの)からスキャンして製作していただきました。
3. DAM45が、マスター・テープにできるだけ近似することを目標にしている理由 (1)カッティングの立ち会いメンバーと、マスターテープ、ラッカー盤の凄さに唖然! ● DAMPC側のの立ち会いメンバーは、常に同じ2人です。 ・DAM45の曲選定は、岩瀬氏と筆者が行っていましたので、アルプス交響曲以降、東芝EMIのDAM45については、
川口工場、御殿場工場、赤坂本社、テラ・スタジオなど、2人で欠かさず立ち会っていました。
・メンバーは、東芝EMIが、DAM担当の小山氏、工場から原氏、カッティング担当、そして岩瀬氏と私というのがほぼ固定メンバー。
・初めてのカッティング立ち会いである、アルプス交響曲のカッティングは、川口工場で行われ、ディレクターの澤田実氏も立ち会い。
カッティングは竹内氏でした。
・タイトルやカッティング場所によっては、ディレクターや、ミキサーも立ち会われたこともあります。
● マスターテープとラッカー盤は素晴らしい! ・マスターテープをまずラッカー盤に、カッティングマシンのイコライザーを通したものとスルーしたものを、試しカッティングします。
・最初にラッカー盤の再生を聴いたとき、予想を遙かに超える素晴らしさに驚嘆したものでした。・何回かカッティング立ち会いをするうちに、マスターテープがバランスさえ良く録音されていれば、
カッティング時にイコライザーを通さないストレート・カッティングが、最もマスタテープの情報量とリアルさを損なわない
のではないかということが、相互理解になっていきました。
・とはいっても念のため、タイトルごとに、必ず毎回各種条件設定をして、テストカットを続けてきました。
・WEB上で色々いわれているようですが、EMI原盤のDAM45制作用マスターは、すべて、英国EMIから輸入されているものを使用しました。
唯一例外のDOR0121「アン・マレー/辛い別れ」は、アメリカ・キャピトルからのマスターテープを使用しました。
(2)DAM45のストレート・カッティングへのこだわり ● カッティング・マシンのイコライザー調整システムは、我々アマチュアが再生時にコントロールアンプで使用するトーンコントロールとは、比べものにならないほど複雑な回路です。その回路を通すだけで、マスターテープのリアルな情報量や音場空間が大きく変化することを、ラッカー盤へのテスト・カッティング後の試聴で痛感しました。
● これらを数値で掴むことは難しいのですが、アコースティック楽器を中心にホール録音が主体の音楽では大きく影響が出てしまいます。
*東芝EMIの三次元アナライザーによる動的な分析では、その原因の片鱗を見ることができました。
*筆者も、自宅のスペクトラム・アナライザーで観察をした時期も有り、二次元の周波数特性だけでは表せない何かを感じました。
この経験から、ある程度は計測機器に頼っても、最後は人間の聴感が極めて重要と、改めて思い知らされたのです。
● リアルな情報量や音場空間が一度失われると、残念ながらもう再生側では取り戻せません。
● 高域から低域まで、周波数特性は、会員のお好みにより、ある程度再生時にご使用になるアンプでの補正が可能です。
DAM45では、再生側で補正できない、マスターテープの持つリアルな情報量や、音場空間をできるだけ忠実に再現できるよう、ノンリミッター、ノンイコライザーのストレート・カッティングにこだわりました。● どうしても、録音会場の条件などにより、低域が足りないなどと感じられる場合に限り、送り出しテープレコーダの再生周波数を微修正することで
なんとか情報量をそこなわずにカッティングしたこともありました。
● マスター・テープは、録音にかかわった「演奏者やプロデューサー、ディレクターが了承したもの」と考えられます。
ですからDAMが音楽面からも、ストレート・カッティングにこだわる理由の一つです。
(3)カッティング用送りだしテープレコーダーに、録音時と同じものを使いたい! ● 通常マスターテープを作成したテープレコーダーと、カッティングマシン用送り出しテープレコーダーは異なることが普通です。
その場合は、ノイマンとステュダーでそれぞれ試しカッティッグして、よりふさわしい方に決めました。
● 更にDAMオリジナル録音をするようになって、クラシックの2チャンネル録音の場合は、可能であれば録音に使ったそのテープレコーダを送り出しに使って録音・再生のテープレコーダーの同質性を保つということも実施しました。
運搬・セッティング・調整など、東芝EMIさんの多大なご協力をいただき実現できたことです。
(4)マスターテープとサブ・マスターテープについて ● 外国レーベル(たとえばEMI、英デッカ、独グラモフォン---)を日本国内で製造する場合、本国からテープを取り寄せする訳です。
(一部レーベルではステレオ初期にメタル原盤を輸入していたケースもあります。)
これは本国にあるカッティング用のマスターテープをダビング (コピー)して、各国の契約会社に送られてくるわけです。
海外レーベルについては厳密に言えばサブ・マスターテープです。*EMIに関しては、イギリス本社からの輸入マスターテープを使用しました。
● アナログテープは、残念ながらダビングすれば、多少といえどもなにがしかの音の劣化は避けられません。
*ですからレコードマニアは、本国の初出 輸入盤を珍重するのでしょう。
(初出から年月がたつと本国といえども、サブ・マスターテープに切り替かわる可能性が有ります。)
● とはいうものの、マスターテープとサブ・マスターテープの差より、カッティング時のイコライザー・リミッターなどによる差の方が大きな影響があると自主録音を経験して感じました。ですからDAMは、EMI原盤については、イギリスからのサブ・マスターを基準にしていました。
*保管されていた古いサブマスターと、新たにイギリスから取り寄せた新サブマスターを試聴し、敢えて古い方を選んだこともあります。
● デジタルは理論的にダビングしても全く同じコピーができるということですが、こと音に関する限りエラー補正の影響も有り、全く同じにならないのでは?という議論がありました。DAMPCもそう思っています。
● しかし、DAMオリジナル録音の場合は、その最初のマスターテープをそのまま使用してカッティングできるわけです。
オリジナル録音ですから、録音したミキサーもディレクターも、録音に立ち会ったDAMPCも、録音現場の音から、カッティングマスター(ポップスなどは間にトラックダウンが入ることが多いです)を経て完成品のレコードになるまで、一貫して携われます。
DAMオリジナル録音の場合、できるだけカッティング・マスターを作成したレコーダーを、カッティング時の再生送り出しにも使うようにしていました。
*DAMPCは、サヴァリッシュ〜バイエルン国立歌劇場のミュンヘン録音、コルステイン〜前園のザルツブルグ録音、この2つの録音以外の、すべてのDAMオリジナル録音現場に参加しています。(5)DAM45は、何故カッティング・レベルにこだわるのか? ● 市販レコードのカッティングは、全てのタイプのプレーヤを対象にしているので、針飛びやビリ付きが無いように、カッティグレベルは安全圏で設定されます。
● それでも、聴感上の音量感をあげるために、ダイナミックレンジを犠牲にしても、リミッターやコンプレサーを使用するのだそうです。
● DAM45は、毎回できる限りカッティング・レベルを大きく設定しています。これは、プレスされたレコード盤で、マスター・テープの情報量とリアル感そして広大なダイナミック・レンジをできるだけ保つための大きなノウハウであることを、体感しました。
SN比を稼ぐという理由だけでは説明できない何かがあります。
● レベルを上げるためには、カッティング担当者にとても大きな負担がかります。カッティングマシンでは先行するヘッドにより、隣の溝同士が接触しないよう、自動コントロールされるのですが、DAM45のハイレベル・カッティングでは通用しないそうです。
カッティング担当の熟練した職人技と熱意に助けられて、カッティッグレベルが高い、DAM45が生まれました。
● DAM45の外周を見ると、溝と溝の間隔が異常に広くなっています。これは、プレスの圧力で、隣の溝が干渉して、テープのゴーストに似た現象を起きるのを避けるための策なのです。特に冒頭は目立ちますので---。初めのうちは、テープのゴースト現象だとばかり思っていました。
これは、レコード全体に悪影響を与える現象なので、製造現場でのスタンパー糊付けなどの対処の結果、大幅に改善されました。
● 更にハイレベル・カッティングは、プレス行程で問題が出ました。スタンパーからレコードが剥がれにくい現象が発生。
もともと、DAM45はバージンの高品質材を使用していましたが、さらなる高みを目指して、材料の開発と、プレス技術の改良が進められたのです。
*DAM45は、御殿場工場内でも特別に調整された専用ラインでの製造でした。
(6)カッティング時のモニターシステム ● 東芝EMI(株)御殿場工場 試聴室 20畳以上 (カッティング室とは別室) *原さんがメンテナンスされていました。
*東芝EMIの各所にある試聴室の中で、ここが最もDAMPCとして通常感覚で安心して判断できるシステムでした。
・モニタースピーカー JBL 4320→4343a
・メインアンプ スレッショルド4000
・プリアンプ スレッショルドNS10
・プレーヤー テクニクスSP10 鉛+合金製特注ボード
・カートリッジ オルトフォン MC20 + オルトフォン・ヘッドアンプ *私もセレクトしたMC20 他を持参していました。
・アーム FR64S
その他、機材が必要に応じて持ち込まれていました。
(7)正式カッティング後のラッカーマスターの処理 ● ラッカー盤は、素晴らしい音を再現しますが、大きな欠点があります。それは生ものだということです。時間経過とともに硬化し、音質も劣化していきます。
● 柔らかいので、カッティグ後、一度でも試聴したテスト・ラッカーは、製造には使えません。
テストデーターを元に、再度、翌日以降にカッティグするのです。
*マスタープレスは、特に多数のラッカー盤を必要とします。
● ラッカー盤は、カッティングした当日にメッキ行程に入れるのが理想的だそうで、メッキ行程を持つ御殿場工場でのカッティングはとても良い環境だったわけです。
● 御殿場以外では、後年赤坂本社にもカッティングマシンが設備されましたが、DAM45は本社でカッティングした場合でも当日にメッキ行程に入るよう、特別な運搬体制がとられました。
(8)テスト盤の判定 ● 何日かすると、2種 各5枚程度のテスト盤が届きます。岩瀬氏と私で、自分の装置でテストします。
● しかしまれに、カッティングと印象が違う仕上がりに気がつくことがありました。東芝EMI御殿場の技術陣と連絡をとり、そちらでの判断もきいてみて、同意見であれば、再度カッティングとなります。もともとタイトなスケジュールなので、頒布会スタートに間に合わせるのは大変です!
● 一度、複数のテスト盤の音がそれぞれ微妙に異なる現象に遭遇。これも原因が究明され、その後のプレス行程の改良につながりました。
●筆者の普段のモニター機器 モニター機器(当時)
・クラシック・レコードの試聴機器 (アンプ・スピーカー)
初期: ゴトーユニット・ホーンシステムをバイアンプ駆動。 (サブ)ヤマハ NS1000M、LUX B12
中期〜後期: ロジャース LS 5/8 および専用バイ・アンプシステム + アキュフェーズ C240→ C280
・クラシック以外のレコードの試聴機器 (アンプ・スピーカー)
初期: ヤマハ NS1000M、LUX B12
中期〜後期 : JBL 4343A 、アキュフェーズ M100 + C240→ C280
・基準カートリッジは、オルトフォン MC20 (SELECT品) 、VMS20E、光悦ブラック、オーディオ・テクニカ AT33E、AT150EaG 等
・アームは、FR-64S、 光悦 、トランスは FR FRT4、XG5 、光悦、 モーターは、SP10→ LUX PD555 (バキューム吸着)
(9)頒布会リーフレット掲載原稿のための試聴 (対象全機種を1日で岩瀬氏が試聴・原稿用メモ) ● 当該頒布会用DAM45を2種 各5枚のテスト盤を用意
● 試聴機器 JBL 4343A アキュフェーズ M100×2 C280L LUX-PD555
アーム:光悦、 FR64S、トランス:MC(3Ωタイプ)には、光悦 FR FRT4,5 高出力MCはC280Lヘッドアンプ使用
● 試聴方法 岩瀬さんの指定箇所を2箇所。(事前に岩瀬さんも自宅でテスト盤を聴いています)
各機種とも、事前に周波数テストレコードで1KHZの出力レベルを記録。
音量は試聴時それにあわせて微調整。必要に応じて、岩瀬さんの要望で増減。
シェルが附属しないものについて、MMは軽量タイプ、MCは重量タイプで、接続線材など原則同じものを使用。アームはハイ・コンプライアンスカートリッジなど、必要に応じて、SME各種、サエクなども用意
朝は、MMから試聴開始。頒布価格順。午後はMCを頒布価格順に試聴。
毎回、夜遅くまでかかり、思えば重労働でした。
後日、岩瀬さんが、完成原稿をデザイン・ハウスに入稿。
「マニアを追い越せ!大作戦」リーフレットが印刷され、各店から会員に郵送されるというシステムであった。
この原稿が載った、「マニアを追い越せ!大作戦」の大型リーフが会員にDMされ、それを元に、店頭でカートリッジを購入した会員には、同じレコードも渡されました。会員から「書いてある音と違うではないか?」などのクレームがでるのではないかと心配しましたが、15年間、一度もクレームが無かったようです。 4. DAM45(スタート時)物理特性アップのための基本コンセプト (1) 全体の周波数特性を上げるため、33回転ではなく、45回転にすること。
(1967年、東芝エンジェル・レーベルのパーフェク・サウンドシリーズとして、バルビローリ〜ハルレ管弦楽団の
シベリウスの交響詩を入れた45回転 LPレコード[AA459005]等が発売されました。
私は当時それを聴いて、通常の33回転 LPとはちがう、とても素直な音と感じていました。)(2) 針飛びがあっても、東芝EMIにはクレームを持ち込まないので、可能な限りハイレベルでカッティングして欲しいこと。
(市販レコードは、当時5,000円程度の免税プレーヤーでも針飛びしないようにするためカッティングレベルを下げたり
コンプレサーをかけたりすることがあったようです。)(3)内周での歪みを下げたいので、最内周まではカッティングしないこと。そのため一面の収録時間は10分前後とする。 (4)盤質による、ノイズやソリ、偏芯、共振はできるだけ低減して欲しいこと。 以上が、スタート時点でのコンセプトですが、その後、回を重ねるごとに、東芝EMIさんの技術・製造部門の
絶え間ない改良のおかげでDAM45が、最高水準に達したこと、心より感謝申し上げます。
タイトルごとの進化の歴史等の詳しい内容は、各レコード解説書PDFに記載されています。
5. DAM45の選曲方針とアルバム全体に関するこだわり (1)会員向けのカートリッジ頒布会のお客様への試聴用テストレコードとして非売品の頒布品ですが、
オーディオ的に高品位であること。(2) 市販品では入手が難しい、オリジナリティが高いものであること。 (3)年に2回、夏、冬の頒布会(マニアを追い越せ!大作戦)時期に合わせて、各回2タイトルずつリリースする。
音楽ジャンルは、オーディオ・チェックに最適なクラシック系1タイトル、ポップス・ジャズなど1タイトル。(4)音楽の選択基準は、「曲が親しみやすいこと、できれば有名であること」、「名演奏であること」、「録音が良いこと」。
(5)レコード会社の原盤を使用するときは、録音の良いマスター・テープを選び、(特に低域には注意を払いました。)
完成品のDAM45を、できるだけマスター・テープのレベルに近づける。
*カッティング時のラッカー盤の試聴の結果、EQを使うことなく、ストレート・カッティングすることが殆どだった。
(6)新技術を積極的にとりあげ、レコードの品質向上を心がけること。 (7) 両面カラージャケット、解説書共にレコード内容にあった高品位な仕上げで、永久保存仕様とする。
録音情報、スタッフ名、機材と配置等、可能な限り詳細に記載する。(当然、解説書のページ数は多くなります。)
特にカッティング担当者と使用機材、カッティングデーターも明記。
(8)帯もゴールド又はシルバーの特色インキ使用。10cm幅で両面使用。新技術等を明記。
ビニール袋も、プロユース・シリーズのスタイルと同じ、余裕サイズで密閉。
*さすがに最初の発売から40年を経た現在、密封ビニール袋の余裕は少なくなりましたが、まだレコードには負荷をかけていません。(9) 頒布会対象のカーリッジであれば、価格に関係なく最低1タイトルは一緒にお渡しするので、
そのレコードで対象カートリッジを使用した場合の音質の傾向をリーフレットに明記。
会員のオーディオ・ライフの参考としていただく。
万一対象カートリッジでトレースが難しい場合、その旨明記する。→ 15年間この点での会員からのクレームはありませんでした。(10) DAMオリジナル録音の場合、可能であれば、会員がその録音現場に参加できるよう心がける。
→ 12タイトルで実現しました。一例 西島三重子ダイレクトカッティング記載リーフレット
6. DAM45の収録曲の選曲から完成まで。
(一部、カッティングなど内容的に重複する部分もありますが、流れを追って時系列で見てみます。)(1)日頃の情報収集
● 手持ちのLPはもちろん、各社新譜の主だったものを聴いて、音楽的な面と、録音状況のメモを作成。
● オーディオ・チェック系のレコードは、各社発表の殆どを聴いていました。
● 音楽評論&オーディオ関連の月刊誌・週刊FM誌、新聞、テレビ、コンサートなど、くまなく調査します。
(その当時はまだインターネットはありませんでした)
● コンサートを聴きに行く。
● 友人・知人からの情報交換 特にDAMオリジナル録音の場合、このチャンネルに大変お世話になりました。
(2)収録曲が決まるまで(EMIの原盤使用の場合です) ● 過去のDAM45の評判、直近の音楽の流行、クラシックの場合は、来日情報、過去のメモなどを総合して候補をいくつか選ぶ。
● 東芝EMIの初期発売盤、再発盤、イギリス、ドイツ、アメリカなどの海外輸入盤を揃え、かつ、他社同曲競合盤を集め、音楽的にも録音的にも存在意義があるかどうかを判断。
● クラシック以外については、各種情報を集めた上で、DAMPCの岩瀬氏と相談。
● 候補案を持って、東芝EMI-DAM担当プロデューサー小山氏と、実現可能性について予備折衝する。
それを持って、小山氏は実現可能性について、社内根回しを開始していただく。
● その前後にマスターテープを試聴して、DAM45でまだクオリティ・アップできる余地が大きいと確信した場合
曲の最終決定としました。
● ポップス系は、アーティスト側との契約上、初めから難しいのはわかっていましたが、小山氏の人脈と努力で何とかOKをとることができました。
クラシックでもカラヤン原盤を使用するためには、国内、海外、カラヤンサイトそれぞれのOKが必要でした。
最初のDOR0031「カラヤン/ワーグナー」がの承認が出たときは、とてもうれしかったことを今でも思い出します。
とにかく、小山氏の熱意と東芝EMI、担当プロデューサー、ディレクター、各編成部署の絶大なご協力があって
実現にこぎ着けられたわけです。改めて、当時の関係者の皆様に、心より感謝いたします。
● 使用可能見込みが判明した時点で、DAMPCに正式報告後、第一家電から東芝EMI側に正式発注となり、制作が開始されました。
(3-1)DAMオリジナル録音が決まるまで ● 第一家電DAMは、レコード制作以前から生録音会を主催していました。
また、2トラ38オープン・テープデッキの販促用に「DOR0036 EVERGREEN76/45」の原盤になった2インチ幅76cmマザーテープを制作していたのです。
● 東芝EMIのイギリス原盤使用では、どうしてもサブマスターの使用となってしまいます。
さりとて、完全なDAM自主録音は予算的に無理だろうと思っていたのです
。
● しかし、生録音会の同時ライブレコーディングした、「DOR0030 LIVE!NEW HARD 76/45」や、上記「DOR0036 EVERGREEN76/45」のリアルな音に魅力を感じてことも事実です。
● そこで小山氏と、東芝EMI第一スタジオで録音可能な小編成の音楽グループはないかと相談して候補になったのが、デューク・エイセスでした。
当時、「女ひとり」の大ヒットをだしていましたが、デューク・エイセスは人気はもちろん、もともとジャズレパートリーも柱で有り、その美しい男性ボーカルの魅力と実力はオーディオチェックとしても魅力的。小山氏と阿吽の呼吸で決まったのでした。
● その後、第一家電の春の会員招待コンサートでのライブ中継録音をしたり、1年以上交渉をして実現に至ったもの等、原盤使用とは異なり、DAMオリジナル録音実現には多くの苦労やトラブルもありました。
・DAMPCのつてをたどり実現可能性を検討。その後、東芝EMIさんと一緒に正式交渉に当たり実現したもの。
・DAMPCと東芝EMI 小山氏との相談から実現したもの。
・東芝EMIさんからの要望を受けて、DAMと東芝EMI・市販の共同録音で実現したもの(曲選定とアナログ録音についてDAM要望)等、バイノーラルを含め、全部で36+2=38タイトルのDAMオリジナル・レコードが送り出されました。
これもひとえに、多くの関係者の大変なご協力をいただき実現いたしましたこと、厚くお礼申し上げます。
(3-2)DAMオリジナル録音 打ち合わせ → 録音当日 → トラックダウン ● 打ち合わせメンバー:
プロデューサー、ディレクター、ミキサー、マネージャー、(場合によってはアーティスト)、DAMPC (岩瀬氏と筆者)
*DAMの場合、頒布会開始日から逆算してのスケジュールがタイトなので、この部分も極めて重要です。・アーティストのマネージャー(あるいは事務所)と選曲と編曲者、録音スケジュール等、打ち合わせ ・スケジュールにあわせて、速やかにスタジオあるいは、ホール (クラシック)を押さえる。
*クラシックの場合、東京23区内の音が良いとされるホールの空きを捜します。
手分けして行いますが、空きがみつからず、これがいつも大変で、冷や汗ものでした。● 録音当日のメンバー : プロデューサー、ディレクター、アーティスト、マネージャー、ミキサー、録音関係者多数、
(ライブ録音の場合、録音中継車が入ることもありました)
カメラマン、インタビュアー、オーディオ評論家、デザイン関係者、DAMPC (岩瀬氏と筆者)・録音方式や希望等については等事前に打ち合わせていますので、DAMPCは立ち会いますが、当日の演奏に関しては、東芝EMIスタッフにお任せです。 ・DAMPCは、インタビュアやオーディオ評論家、カメラマンと打ち合わせ後、ミキサーのそばで、録音に立ち会います。 ● トラックダウン (後日)
ミキサー、プロデューサー、ディレクター、(まれにアーティストが参加することもありました)、DAMPC (岩瀬氏と筆者)・たいていの場合、東芝EMI内のスタジオを使用しましたが、貸しスタジオを使うこともありました。
深夜まで及ぶことが珍しくありませんでした。・クラシックの場合、可能であれば録音時と同じ、調整卓やテープレコーダーを使用しました。 ・録音時と違い、DAMPCに意見を求められることもありましたが、ミキサーさんを信頼していました。
(4)カッティング *DAMPCの岩瀬氏と筆者は、DOR0004〜164まで東芝EMIの全てのカッティングに立ち会っています。 ● カッティング立ち会い
音響技術責任者の原氏、カッティング担当者、プロデューサー、ディレクター、DAMPC (岩瀬氏と筆者は毎回必ず立ち会い)● カッティング場所 東芝EMI内4箇所です。 ・御殿場工場内 製造工場内なので、試聴室も広く設備も良かった。遠いので1日がかりとなります。
ここが一番多く使われました。・赤坂本社内 近くてスタジオと直結しているのがメリット。当時、竹内氏が常駐されていました。
御殿場に次いで使われています。・テラスタジオ ウオーターフロント 営業用貸しスタジオ(カッティグ室併設)なので、とても綺麗です。
DOR0161西島三重子ダイレクト・カッティングで使用。・東芝ケミカル川口工場内
最初期のDOR0026-27「アルプス交響曲」で、原氏と、ディレクターの沢田実氏と、初めてカッティング立ち会いをしました。
*キングレコード製造 (プレスは日本ビクター)のDAMスーパーアナログ・ディスクは、キングレコードの市販品「ザ・スーパーアナログ・ディスク」と同じ仕様です。(ハーフ・スピード・カッティング・33回転です。DAMオリジナル録音はありません。)
最初に筆者がカッティッグに立ち会い、高和プロデューサーから説明を受けました。
その後のタイトルは、DAMPCが選曲したあと、カッティングを含め、日本を代表する名プロデューサー高和元彦氏に全面的にお任せしました。
*最後のDAMスーパー・アナログディスクである、ファンハウスとの共同制作の海外第2弾オリジナル録音は、DAMが「春」と「クロイツェル」有名曲2曲カップリングのアナログ録音 LP (33回転)を発表し、ファンハウスさんは、市販で「ベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲」デジタル録音CDを販売するという取り決めをした後は、ファンハウスさんにお任せしました。プレスは、オランダ・フィリップス製でした。
*なお、DAMでも「春」と「クロイツェル」のデジタル録音CDを発表しました。
● DAMPC (岩瀬氏と筆者)立ち会いでの仕事の内容 ・ここがレコードの音色・音場など聴感上の仕様を最終的に決めるところです。
・DAMオーディオチェックレコードの担当責任者である、DAMPCの岩瀬氏と筆者は、マスターテープを試聴し、ラッカー盤へのテストカットを皆さんと聴き比べます。
・マスターテープに、情報量・音色・音場感・リアル感・ダイナミックレンジなどが一番近いのはどれか。
・カッティングレベルをギリギリまで上げて、歪まないかどうかなどをチェックします。
・ごく初期を除き、殆どのマスタテープは、リミッターや、イコライザーを通さないストレート・カッティングが、
音楽のジャンルにかかわらず最も良いと感じました。
全員一致で、同意見となって、製造用の本番カッティングの仕様が決まりした。
・それでも、毎回、同じような試聴を繰り返し、万全を期しています。どうしても低域が足りないというケースも数回あり、
その場合は、再生テープレコーダーの周波数特性をわずかに調整して、情報量・音場感・リアル感を損なわないようにしました。
・外国原盤使用の場合、テストに持参したのは国内盤・輸入盤そして試聴カートリッジ (セレクトされたオルトフォンMC20)です。
・カッティングルームのEMTカートリッジは、マスターテープと比較することなく聴いている分にはとても個性的で良いのですが、
一般的ではありません。
EMTは筆者も使用していましたが、勿論名器に違いないので誤解されませんように----。
・そこでDAMPCの長年の体験から、オーディオ・マニアが手軽に購入でき、かつ特性も良く、トラッカビリティも普通のMC20を
標準機として選びました。
*ただし、MC20 複数個からから試聴でセレクトされた、優秀なものを使用していました。
(5)テスト盤の判定 → 製造へ ● 数週間後、テスト盤が5〜6枚届きます。岩瀬氏と筆者が、それぞれ自宅のシステムで試聴します。 ・カッティング時の、基準に従って、試聴。岩瀬氏と私の意見が判定と一致すれば、私か東芝EMIの小山プロデューサーにそのように伝えます。
・岩瀬氏と筆者は、音楽の好みも、試聴システム等も違うのですが、不思議に判定で意見が分かれたことはありません。
・好きな音楽ジャンルは異なるものの2人ともアコスティック楽器中心の音楽が好みで、レコードだけではなく
コンサート体験が豊富にあり、カッティング時の決定仕様をよく覚えているためでしょう。
・1回、5枚のテスト盤が、微妙に音が異なるケースがあり、東芝EMI側に伝えました。
その原因が解明され、更に製造技術が向上しました。
・テスト盤での内周歪みや、ゴースト、プレス不良があった場合は、再プレス、あるいはレアケースですが再カッティッグになりました。● すぐに、そのテスト盤で、頒布会対象カートリッジ全数 (60〜80機種)を、岩瀬氏と筆者で試聴して、頒布会リーフレット用試聴記を岩瀬氏がメモし、その後原稿にして。入稿します。
*その詳細は、上記「3.DAM45が、マスター・テープにできるだけ近似することを目標にしている理由 」(9)をご覧ください。7. 25年も経た今、<Super Analogue DAM45> サイトを公開するわけ 本年2015年1月末、DAM45のメーカー側責任者、元東芝EMIの小山正敏氏が逝去されました。
元DAMPCのメンバー3人で弔問した折、小山氏の奥様から生前、小山氏が制作という仕事に15年間以上携わる原点になったDAM45シリーズを懐かしく話されていた、とうかがったのです。
そこでその帰路、元DAMPCのメンバー3人で相談。
メンバーが元気なうちに、DAM45のディスコグラフィー中心の情報サイトを、立ち上げようとなった次第です。
発行元の第一家庭電器も、東芝EMIも、残念ながら既に存在していません。
そこで約4ヶ月をかけて、当時の関係者の方々90名近くに連絡をとり、DAM45サイト公開の趣旨に全員快くご賛同いただき、また氏名記載のOKもいただきました。
(*まだ連絡が取れないかたもいらっしゃいますが、連絡がとれ次第、追加掲載させていただく予定です。)
DAM45は、単なる販促物ではありませんでした。
「マニアを追い越せ大作戦(頒布会)」の対象カートリッジとDAM45は、不可分の関係です。
回を追うごとに、会員の大勢の皆様の期待が大きくなり、その声に答えるべく、東芝EMI(株)様をはじめ製造メーカー技術陣のたゆまぬ技術・製造ノウハウ投入の結果、日本のスーパー・アナログ・ディスクが世界に誇る最高水準に達したものと思っています。
スーパー・アナログ・ディスクの製造が終わってから、25年。
当時DAMPCが各タイトルの「制作にあたって」主張していたことですが、デジタル録音・再生技術もようやくその不満点が解消の域に達したようです。でも、すでに音楽再生は、パッケージ・メディアが主役ではなくなりました。
しかし、その当時のDAM会員の方、あるいはその家族の方々が、WEB上のブログなどで「スーパー・アナログディスクDAM45」のことを、懐かしそうに語られています。さらにはDAM45を初めて、中古レコードショップやオークションで入手され、WEBに書き込まれる若い方々も見受けられるようになりました。
そこで、企画・制作をしたDAMPCとして、DAM45/33の正確な情報をオフィシャル・サイトとして公開させていただきました。
当時ご協力をいただいた方々や、応援していただいた多くのDAM・VIP会員の方々に対して、あらためて心より感謝申し上げます。
本サイトの運営は、元DAMPCメンバー3人の個人ボランティア活動として行います。
DAM45最終発行日から既に25年を経ていますので、情報の再確認も難しい状態ですが、DAM45レコードと、企画ノート、FM誌の広告資料などから、本サイトを制作いたしました。
至らぬところも多々あると思いますが、誤記や間違いなどありましたら、下記までメールでお知らせいただければ幸いです。8. ファミリー向けカラオケ・レコードのパイオニア 第一家電DAMカラオケ・シリーズ (1)DAMカラオケシリーズ登場の背景 ● 発売時期 1977年12月に「リクエスト・カラオケ」(LP2枚組)を発表。
・家庭用カラオケ・レコードとしては、草分けと思われます。クラリオンが家庭用カラオケに(8トラックカートリッジ)参入したのが1978年。
*それ以前には、テイチクから「石原裕次郎、八代亜紀のヒットメロディー」というLPが出ていたようです。
・「ファミリ・カラオケ・レコード」は15タイトル48枚。「カラオケ・コンテスト・レコード」は7タイトル7枚が発表されました。
・レコードの後は、カセット・テープ、CD、DVD、VHD、LDと、メディアの変遷と共に。多数発表しましたが、現時点で手元に資料がみつからず、詳細は不明です。
● バイノーラルから更にマニア以外の方にもマイクとカセットを使って貰うために、DAMが考えたのが子供から大人まで広い層向けのものが、「DAMファミリーカラオケ4枚組」(8タイトル)です。
特に若い世代のために、最新曲を新録した2枚組の「ニュー・ファミリー・カラオケ・ベスト24」(6タイトル)も発表されました。
● 初めはカセットデッキにミキシング機能が付いていない機種も多く、第一家電としてミキサーをつけ、その結線方法の独自マニュアルも作成して、カラオケの普及に努めました。各メーカーにも要請した結果、カセットデッキのミキシング機能は標準装備となったのです。
● 第一家電のカラオケシステム販売が発展できたのは、お客様にカラオケを家庭で楽しんでいただくという、当初の理念を貫いたからだと思います。
● 「カラオケコンテスト」
東芝EMIのスタジオで、プロと同じシステムで録音し、レコード化。応募者全員にレコードを差し上げるという、今考えると、とんでもない企画でした。改めて、企画担当者として関係者の皆様に感謝申し上げます。
●その後、コンポ + カセットデッキの独自組み合わせ=DACシリーズから、メーカー製シスコンが生まれるきっかけとなりました。
メーカー・シスコンにもDAMカラオケ・レコードをセットして、独自の販売を展開して売り上げを大きく伸ばす一助となったのは間違いありません。
(2)DAM45との関係 ● DAM45と同じ、DORナンバーシリーズです。33回転ですが、東芝EMIとの共同録音が多く、同じスタジオを使い最新録音をしていました。
● DAMカラオケを数多く手がけていただいた、当時東芝EMIの富岡 豊ミキサーは、「DAMはスタジオ・ミュージシャンも一流だったから--。」とのこと。
● ファミリー・カラオケシリーズは、予想を遙かに超える評判をよび、DACシリーズ、シスコン、モジュラーステレオの拡売に大きく貢献しました。
● 録音は最新ですが、レコード仕様は市販品と同じで、かつ生産量も多かったのす。通常仕様・大量生産のDAMカラオケで、DAM45のコストが高いことを、カバーしていただいていたと思います。
● DAM45が、自主録音やすべての面で最高品質を長期間維持できたのも、レコードからテープ、CD、VHD、LDなどのカラオケシリーズのお陰だったのです。
(3)DAMカラオケレコードから、カセット、CD、そして映像のVHD、レーザーディスクへの発展 ● 東芝EMIは、ニューミュージック分野が強く、流行歌は、カラオケ音源のストックが豊富ではなかったので、結果的に新録音をすることが多く、そのことがDAMカラオケ・シリーズの優位性となり、音質的には最高のものをお届けできたのだと思っています。
● レコードはともかく、カセットは、DAMからの強い要請で製造ラインが新設されました。その後、CDから映像まで、第一家電DAMと東芝EMIの協力関係が発展していきました。
● 特に映像では他社との熾烈な競争から、DAM向け制作の過程で東芝EMIから映像カラオケ歌詞の「色変わりテロップ」が生み出され、業務用カラオケを含め業界標準になったと聞いています。
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